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「広島の成果 つないだ」 G20サミット出席 岸田首相会見 食料安保や環境例示

 岸田文雄首相はインドで9、10日にあった20カ国・地域(G20)首脳会議に、広島市での先進7カ国首脳会議(G7サミット)の成果を波及させるとの姿勢で臨んだ。10日の閉幕直後には「まさに広島の成果をG20につなげられた」と胸を張り、具体的な分野として食料安全保障や環境などを挙げた。一方で、ウクライナ侵攻を続けるロシアに対するG20の非難の色は広島サミットより薄まり、多国間交渉の難しさが浮かんだ=6面に関連記事。(山瀬隆弘)

 首相はニューデリーで10日開いた30分間の記者会見で「広島サミット」と6回発言し、その成果を意識しての交渉だったと振り返った。今回の首脳宣言に盛り込まれた、脱炭素社会に向けた取り組みは「各国の事情に応じた多様な道筋」で進めるとの考え方や、持続可能で強い食料システムの構築を目指す点などが広島サミットを引き継いでいるとも説明した。

 ただ、首脳宣言にロシアを「非難する」との文言はなかった。広島サミットの首脳声明では「最も強い言葉で非難」し、首相も9日の会議で「非難」という言葉を使ったが、採用されなかった。

 日本政府関係者によると、今回の首脳宣言づくりは7月末から本格的に進んだ。外交官による協議では、ウクライナ侵攻への言及のあり方が難航した。インドネシア・バリ島であった昨年のG20首脳会議が示した「大半の参加国が非難」との姿勢を踏襲したかった日本やインドに対し、ロシアや中国は否定的な立場に終始。最終的にはウクライナの恒久的な平和を訴える内容で決着した。

 岸田首相は会見で「武力による威嚇や行使を慎む」など新たな内容も首脳宣言に盛り込まれたと紹介し、ロシアを含む合意に「意義があった」と話した。日本政府関係者は「G20には中ロも新興国も加わり、G7とは枠組みが違う」と説明。非難の思いを込めているという「バリでの議論を想起」との言葉を「妥協の産物」と表現し、「緊密に連携するG7」とは異なる難しい交渉ぶりを吐露した。

(2023年9月12日朝刊掲載)

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