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「平和の丘」整備大詰め 広島市、市民と回遊性向上議論へ 放影研跡地の活用焦点

 広島市が比治山公園(南区)一帯で進める「平和の丘」整備が最終段階に入る。観光客たちが憩える新たな拠点を目指し、すでに園内の展望施設の新設や市現代美術館のリニューアルを終えた。今後は移転が決まった放射線影響研究所(放影研、南区)の跡地活用が最大の焦点となる。30日には市民によるワークショプも始め、回遊性を高める方策を話し合う。(野平慧一)

 比治山公園は、市が1903年、標高約70メートルの比治山に市内初の公園として開設した。桜の名所で知られ、山頂から市街地を一望できる。美術館や市まんが図書館といった文化施設のほか、被爆建物「頼山陽文徳殿」、陸軍墓地なども点在する。

 市はこれらの文化・歴史資産を生かし、原爆被害からの復興や平和を実感できる拠点にしようと、「平和の丘」基本計画を定め、2018年度に約29ヘクタールを対象に整備に着手した。19年度に1期目として陸軍墓地入り口の屋根付きゲート新設や図書館書庫の増築を完了。23年3月に2期目の美術館の改修も終わり、近くに展望台を備えた広場も設けた。

 最終の3期目は、25年度に広島大霞キャンパス(南区)へ移転予定の放影研の跡地(約2・3ヘクタール)の活用が柱だ。市は「平和・芸術文化ゾーン」として、屋外彫刻や芸術性の高い遊具を備えた多目的エリアとして整備する方針を示す。

 ただ、市はかつて跡地に博物館を造る方針を打ち出した経緯もあり、基本計画では、放影研の移転段階で市博物館基本計画などの位置付けと整理するよう明記している。国有地のため、利活用を巡る国との協議も要るという。市政策企画課は「引き続き、跡地の活用に向けた検討を進める」とする。

 一方、市が30日に初開催するワークショップでは、公園内の未利用地の活用策を練ったり、観光客たちに平和記念公園(中区)から平和大通りを経て比治山公園へ回遊してもらう工夫を検討したりする。メンバーは公募した市民たち約30人。本年度内に計4回開き、意見をまとめる予定だ。

(2023年9月14日朝刊掲載)

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