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絵と詩 四国五郎の軌跡 安来・加納美術館で企画展

 画家として詩人として、被爆地広島から反戦平和のメッセージを発し続けた四国五郎(1924~2014年)の創作を伝える企画展「四國五郎展 シベリア抑留から『おこりじぞう』へ」が、安来市の加納美術館で開かれている。10月15日まで。

 同館は、フィリピンに収監された日本人戦犯の助命嘆願などを通じて平和を訴えた画家、加納莞蕾(かんらい)(1904~77年)ゆかりの施設。生家周辺を敷地としている。「安来市平和のつどい」事業の一環で本展を企画した。

 展示は、四国の戦後の原点となるシベリア抑留の記憶と、弟の命を奪った原爆への怒りを表現した油彩が並ぶ一室から始まる。反戦運動の手法として、詩と絵と組み合わせて街頭に張り出した「辻詩(つじし)」も、現存する全8点をそろえた。

 原爆を題材とし、版を重ねる絵本「おこりじぞう」の原画、平和を象徴する母子像をメインにした展示室が続く。「詩人ネルーダの死」は1973年、チリで軍事クーデターの直後に亡くなった国民的詩人パブロ・ネルーダを悼む人々を描いており、四国の国際的な視野も物語る。

 パネルなどによる解説は簡略化した代わりに、四国の詩を絵に関連付けて引用、展示した。「四国さんの絵は、それ自体に説明力がある。詩を添えた方が効果的」と千葉潮館長。近年、展覧会や書籍出版が相次ぎ、全国的な注目を浴びる四国の創作を概観できる貴重な機会だ。

 同時開催の「加納莞蕾展」は、莞蕾の画業と平和活動の軌跡を伝える資料を展示。莞蕾は戦後まもなく、地元出身の戦死者の肖像を遺族のために描いて回ったといい、遺族から同館に寄託された絵も並ぶ。火曜休館。(道面雅量)

(2023年9月22日朝刊掲載)

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