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社説・コラム

天風録 『気候野心サミット』

 気候変動のような問題ならば、たき火を囲み、語り合ってはどうか―。脚本家の倉本聰さんは、札幌でG7担当相会合の準備に入った実務者たちの相談に、そう答えたという。空調がガンガン効いた室内で論じるのは間違い、とも▲その場の誰も、凍ったように口を開かなかった。いや、開けなかったのだろう。既にホテルを会場に押さえていた。安倍晋三元首相の銃撃死事件で、一段と神経をとがらせねばならぬ警備が最優先となったに違いない▲こちらも、倉本さんのお眼鏡にかなうまい。舞台は、ガラス張りの摩天楼が目立つニューヨークの国連本部だった。グテレス事務総長の音頭で開いた「気候野心サミット」である▲ウクライナ支援で、すきま風が吹き始めた。気候変動対策は、何とか求心力を保つよすがだろう。「人類は地獄の扉を開けてしまった」。グテレス氏が冒頭で演説した通り、命運が尽きかねない現状は疑いない。今月も、犠牲者2万人以上というリビア大洪水を目の当たりにした▲サミットで、G7議長国日本は発言を許されなかった。野心の程を見透かされたらしい。「聞く力」が消えうせてしまったのか、議場に岸田文雄首相の姿はなかった。

(2023年9月23日朝刊掲載)

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