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社説・コラム

社説 SDGs中間年 地域から取り組み加速を

 国連が掲げる持続可能な開発目標(SDGs)の現状を話し合う首脳級会合が、国連総会の場で開かれた。2030年の期限に向けて、ことしが折り返し点に当たる。

 「達成は危機的な状況にある」。厳しい認識にがくぜんとした。世界全体の持続可能な成長をうたい、飢餓・貧困の撲滅や格差是正、生態系の保全などに関する17分野の目標と、発展途上国を中心にした国際社会の現実の間には、埋め難い溝があるのだろう。挽回に向けて国際協調を約束した政治宣言の意味は重い。

 15年にスタートして以来、SDGsという言葉は私たちの地域や教育の場で少しずつ定着し、さまざまな取り組みが各地で続く。ただ、ややもすると理念が先行した側面はなかったか。残る7年に向けて、危機感を共有したい。

 国連の評価によると目標達成どころか「遅い」「後退」とする項目が目立つ。何より飢餓や貧困であり、地球規模で深刻化する気候変動への対策もそうだ。長期化した新型コロナウイルス禍に加え、ロシアによるウクライナ侵攻によって機運が低下したのは疑いない。とりわけ発展途上国は経済の苦境から、貧富の格差拡大などに歯止めをかける資金調達が困難な状況は首脳級会合でも懸念された。

 日本政府も今後の戦略を練り直すという。何がどう遅れているのかをしっかりと把握し、国内外での取り組みを加速する必要がある。それは足元の地域でも同じだろう。

 これまで中国地方でSDGsを掲げてきた熱心な活動には頭が下がる。生きた教材にしやすいためか、幼児から大学まで教育現場の取り組みは一定に進んでいる。

 例えば瀬戸内海の海岸のプラスチックごみ回収や生き物の調査、里山の保全・活用といった環境分野は分かりやすく参加しやすい。日々の食品ロスを減らし、食生活を見直す営みも関心を呼んでいるはずだ。産業界でも資源の浪費を抑え、廃棄されるものを再利用する動きが広がる。

 国内で見れば、SDGsの意味とは開発最優先で大量生産・大量消費を続けた発想を見直し、自然とも共生する住みやすい地域をつくることだろう。かねて生態系保全やリサイクルが先進国の中で立ち遅れ気味だっただけに、こうした地域の在り方を問う流れを強めるのは当然である。

 加えて視野をもう少し、広げてもいいのではないか。地球規模でSDGsの達成がおぼつかない今だからこそ。

 日本でもジェンダー平等が遅れ、世代を問わず貧困の解消は懸案だ。そして世界を見渡せば、日々の食べ物も薬もなく命を落としていく子どもたちがいる。戦火で平穏な暮らしを奪われた人は数多く、大規模化する自然災害に苦しむ被災者たちもいる。圧政などによって人権が脅かされる国々も少なくない。難民の問題は深刻化するばかりだ。

 日本では古着を学校ぐるみで集め、難民に届ける試みも始まっている。「誰一人取り残さない未来」というSDGsの根本理念に近づくよう、やれることはやりたい。

(2023年9月23日朝刊掲載)

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