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社説・コラム

朝凪(あさなぎ) 被爆者 日韓のはざまで

 韓国政府から初の招待を受けて9月28日から今月3日まで同国を訪ねた在日韓国人被爆者に同行した。祖国の大統領との面会も果たし、喜びに包まれた被爆者たち。ただ、あの日からの歳月を語るとき、胸にしまい込んできた思いがあふれ出す。

 ある人は、被爆後の混乱と貧苦の中、祖国と日本で生き別れたまま亡くなった父を思い、涙した。またある人は、差別から逃れられず、親しい人にも在日韓国人だと明かせずにいる九十余年の人生を振り返り、こぼした。「堂々と生きてみたい」

 あの日、幼子だった被爆者は今、つえを持ち車いすに乗る。長きにわたり背負ってきた苦しみや悲しみはいかばかりか。彼らがたどってきた道のりと胸の内を、私はどこまで言葉で表し、残せるだろう。(平和メディアセンター・小林可奈)

(2023年10月4日朝刊掲載)

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