染め上げる 命の尊さ 被爆後に死産・流産を経験 故杉谷さんの作品 廿日市で展示
23年10月5日
被爆者で染色家の杉谷冨代さん(1922~2012年)の作品展「生命(いのち)を染める」が、廿日市市下平良のはつかいち美術ギャラリーで開かれている。被爆や流産の体験を経て杉谷さんが命の大切さを訴える作品が並ぶ。入場無料で22日まで。(八百村耕平)
杉谷さんは三原市出身。同市に帰省中に原爆が投下され、翌日に夫のいる広島市内に戻り、入市被爆した。この時、23歳。戦後は死産や流産を繰り返し、母になることを諦めて創作に没頭。40代で夫を亡くした。
会場では約60点の染色作品やインスタレーション(空間芸術)を展示。オブジェ「あの日」は被爆した広島師範学校(現広島大)の木造体育館の遺構材を染めて8人の家族を描いた。夫や生まれるはずだった子どもたちを投影しているとみられる。大地をイメージした布がめくれ上がり、その中にバラを描いた藍染めの作品では、簡単に踏みにじられてはいけない命の尊さを強調している。
学芸員の奥垣内美来さん(28)は「染色作品のイメージが変わると思う。抽象的で見る人に委ねる作品も多く、それぞれの平和を感じ取ってほしい」と話している。
午前10時~午後6時。10、16日は休館。
(2023年10月5日朝刊掲載)
杉谷さんは三原市出身。同市に帰省中に原爆が投下され、翌日に夫のいる広島市内に戻り、入市被爆した。この時、23歳。戦後は死産や流産を繰り返し、母になることを諦めて創作に没頭。40代で夫を亡くした。
会場では約60点の染色作品やインスタレーション(空間芸術)を展示。オブジェ「あの日」は被爆した広島師範学校(現広島大)の木造体育館の遺構材を染めて8人の家族を描いた。夫や生まれるはずだった子どもたちを投影しているとみられる。大地をイメージした布がめくれ上がり、その中にバラを描いた藍染めの作品では、簡単に踏みにじられてはいけない命の尊さを強調している。
学芸員の奥垣内美来さん(28)は「染色作品のイメージが変わると思う。抽象的で見る人に委ねる作品も多く、それぞれの平和を感じ取ってほしい」と話している。
午前10時~午後6時。10、16日は休館。
(2023年10月5日朝刊掲載)