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社説・コラム

『ひと・とき』 画家 千馬弘子さん 広島に立ち創作 初の画集

 広島市で毎年8月に「広島平和美術展」を開いている広島平和美術協会の顧問。原水爆禁止世界大会と同じ1955年に始まり、今年で69回を迎えた同展に、13回から出品を重ねてきた。「今の役員に、核廃絶が実現するまで続けないとね、とハッパをかけています」

 ここ20年ほどは、「ひろしま」と題した抽象画を描き続けている。突き刺さるような直線の束、じわりと広がる赤い色面など、過去に聞いた被爆証言からイメージを膨らませることが多いという。「ひろしま・祈り」と題した初の画集(非売品)に、近作26点を収録した。

 福岡市出身。結婚で広島に移り住み、柿手春三、下村仁一(にいち)、四国五郎たち平和美術展の創立メンバーと交流を深めた。現代美術の手法でヒロシマに向き合っていく殿敷侃(ただし)たちと、69年に始めた「広島青年アンデパンダン展」でも活動した。

 被爆地から社会を問う表現を同志と追求した歩み。「私たちは、原爆で亡くなった人の骨の上を歩かせていただいている。それを忘れずに創作する姿勢は、きっと世代を超えて受け継がれる」と信じる。(道面雅量)

(2023年10月13日朝刊掲載)

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