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ドイツ人捕虜の苦労思う 第1次大戦中に似島に収容 親戚の男性、現地で足跡たどる

 第1次世界大戦中に捕虜として似島(広島市南区)に収容されたドイツ人の親戚のカルロス・ビーンベルグさん(64)が17日、似島を訪れた。100年余り前に同じ地を踏んだ同郷の先人の苦労に思いをはせた。

 今はスペイン・バルセロナで弁護士をしているビーンベルグさん。捕虜として似島の収容所で暮らしたフリッツ・リートケさん(1877~1938年)の足跡をたどるために、日本とドイツの交流史を研究している広島経済大の竹林栄治教授と連絡を取り、初めて来島した。

 リートケさんは母方の曽祖母の妹の夫で、ドイツ領だった中国・青島の石油会社に勤めていたときに招集され、旧日本軍との戦いに参加した。捕虜となり、大阪の収容所を経て1917~20年似島の収容所で暮らした。

 似島では、収容所のあった似島臨海少年自然の家や、島と戦争の歴史を紹介する似島平和資料館を訪れた。歴史ボランティアガイドの宮崎佳都夫さん(75)から「似島は軍の機密が厳しかった所。収容所は塀で囲まれていて、重要な艦船の通る海を見せなかった」などと説明を受けた。

 ビーンベルグさんは「自分はたった3時間の滞在で自由に歩ける。だけど、彼は戦争でここに連れて来られ、何年も自分の意思で動けない生活を送ったんだ」とつぶやいた。歴史を思い起こすことの重要性を説き、島にない収容所の記念碑の建立を望んだ。(衣川圭)

(2023年10月18日朝刊掲載)

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