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被爆建物6件 国史跡に 広島市内のレストハウスや旧日銀支店 文化審答申 西条酒蔵群も

 国の文化審議会は20日、広島市内の六つの被爆建物からなる「広島原爆遺跡」や、東広島市の「西条酒蔵群」など9件を史跡に指定するよう盛山正仁文部科学相に答申した。近く告示され、原爆の惨禍を伝える建物は全国で3件目、酒蔵は初の国史跡となる。(和多正憲、岩井美都)

 被爆建物は、いずれも爆心地から2キロ圏内にあり「被爆の痕跡を顕著に残す」と評価された。うち中区の平和記念公園にあるレストハウスは1929年に大正屋呉服店として建った。爆心地から170メートルで、市内の被爆建物86件の中で原爆ドームに次いで近い。被爆時は燃料配給統制組合の事務所として使われ、地下室にいた1人を除く36人が犠牲となった。

 ほかに4件が中区にあり、ギリシャ風の装飾彫刻が特徴的な旧日本銀行広島支店は壁に被爆時に刺さったガラス片の跡が残る。本川小平和資料館と袋町小平和資料館は旧校舎で、多くの児童が犠牲になった。中国軍管区司令部跡(旧防空作戦室)は原爆による「広島壊滅」の一報を伝えた地とされる。

 残る南区の多聞院の鐘楼は、爆心地に最も近い木造の被爆建物で爆風による倒壊を免れた。市内では原爆ドームが95年6月に国史跡となり、96年12月に世界遺産へ登録されている。

 西条酒蔵群はJR西条駅南側の酒蔵通り一帯にある、白牡丹酒造の延宝蔵▽賀茂鶴酒造の一号蔵▽福美人酒造の大黒蔵▽旧広島県醸造試験場(賀茂泉酒造の酒泉館など)―で構成する。

 延宝蔵は1675年に建てられたとされる日本最古級の酒蔵で、旧県醸造試験場は1929年築。江戸期以降の酒造りの発展を支えた施設がまとまった状態で残り、景観を維持している点などが認められた。

 ほかに史跡になるのは米子市の「尾高城跡」や、茨城県ひたちなか市にある国内最大級の横穴墓群「十五郎穴横穴群」。また、長崎市の「長崎原爆遺跡」の史跡範囲に、被爆樹木のある山王神社境内が加わる。史跡に指定されると、修繕時などに国の補助金を使えるが、現状変更に文化庁の許可が必要となる。

 答申は、段崖と階段状の岩石海岸が特徴のサンニヌ台(沖縄県与那国町)の名勝と天然記念物両方への指定なども求めた。

(2023年10月21日朝刊掲載)

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