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平和公園の設計 応募原本 現存唯一 建築家故佐藤重夫氏提案 広島で複製展示

 広島市が被爆4年後の1949年に実施した平和記念公園(中区)の設計コンペで、後に原爆ドーム保存工事を指揮した建築家の故佐藤重夫氏による応募作の原本が見つかった。応募全145点のうち、現時点で現存を確認できる唯一の原本となる。市公文書館(中区大手町)は23日、館内で複製の展示を始めた。

 佐藤氏の応募作の原本は、彩色を施した鳥瞰(ちょうかん)図と、施設の配置図、新築する「平和記念館」の設計図の3点。いずれも縦80センチ、横109センチほどの用紙に手書きしている。原爆ドームを残した上で、元安川を挟んで相対する位置に国際会議などを開ける記念館を配置。直線で行き来できるよう元安橋の上流に新たな橋を架ける提案をしていた。

 佐藤氏の生涯を調査している古川修文・元法政大教授(建築学)が9月、遺族宅で原本を発見した。市によると、コンペの他の応募作の原本は、採用された建築家の故丹下健三氏のグループを含め全て所在が分からないという。

 戦後に広島大教授を務めた佐藤氏は、67年からのドームの保存工事で中心的な役割を担った。市公文書館は「佐藤氏の強い思いが伝わる作品。第一級の歴史的資料を多くの人に見てほしい」と、来年2月2日まで応募作の複製を展示する。入館無料。(川上裕)

(2023年10月24日朝刊掲載)

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