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被爆死の粟屋元広島市長の次女 康子さんの評伝 日記を基に刊行

■記者 道面雅量

 原爆が投下された当時の広島市長粟屋仙吉さんの次女で、終戦後まもなく19歳で亡くなった康子さんの日記を基に、ジャーナリスト門田隆将さん(51)が評伝「康子十九歳 戦渦の日記」を刊行した。

 遺族や友人への追加取材を交え、戦時下に生きた一人の女子学生の青春を描き出した。門田さんは「甘えや癒やしとは無縁に、しかし希望を失わず生きた姿を今の若者に伝えたい」と話している。

 康子さんは東京女子高等師範学校(現お茶の水女子大)に進学。勤労動員された東京都内の兵器工場での体験などを日記に残した。1945年8月、官選市長として広島に赴任していた父が被爆死。母も重傷を負い、康子さんは看病のため8月末に広島入りした。母をみとった後、自らも病気で11月に亡くなった。

 日記には、敗色濃い日本の勝利を祈って自分を責めるように勤労を誓う言葉とともに、家族愛や職場の配属将校への思慕がつづられている。

 文芸春秋、1500円。

(2009年7月16日朝刊掲載)

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