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[使用済み核燃料どこへ] 「中間貯蔵施設 原発内に整備を」 長崎大・鈴木達治郎教授に聞く なぜ上関に 説明足りぬ

 中国電力が山口県上関町で検討する使用済み核燃料の中間貯蔵施設について、専門家から賛否の声が出ている。長崎大の鈴木達治郎教授(原子力政策)は、原子力施設のない地域での新たな計画である点に着目し、「中間貯蔵施設は必要だが、既存の原発敷地内に造ったほうがいい」と指摘する。背景や核燃料サイクル政策の在り方について聞いた。(編集委員・東海右佐衛門直柄)

  ―中電と関西電力が、上関町で中間貯蔵施設を検討していることについてどう見ていますか。
 関電が老朽原発の稼働条件として「2023年末までに中間貯蔵施設を県外に見つける」と福井県と約束したことが背景と考えられる。おそらく経済産業省が動いたのではないか。一番受け入れてもらいやすい、と国と電力会社が上関町に焦点を当てたのかもしれない。

  ―なぜ中間貯蔵施設が必要とされるのですか。
 福島の事故は、原発内の使用済み燃料プールの危険性を示した。使用済み燃料を金属容器に入れて空冷する方式を「乾式貯蔵」と呼ぶが、そうした安定的な手法で一時保管する「中間貯蔵」が必要だ。運搬の安全や費用を考えれば、原発の敷地内に造るのが望ましい。なぜ敷地外の上関町で建設するのか、誰がどういう理由で決めたのか。説明が圧倒的に足りない。

  ―電力会社が「使用済み燃料は原発から出す」などと地元と約束している場合、敷地内への設置は難しいのでは。
 ただ既に、九州電力は玄海原発の敷地内で使用済み燃料を乾式貯蔵する計画について地元と同意している。四国電力伊方原発などもそう。国が表に立ち、原発立地自治体に敷地内での貯蔵の必要性を説明すべきだ。

  ―国が主体的に関与すべき理由は。
 国や事業者は、使用済み燃料を青森県六ケ所村の再処理工場に搬出するまでの「中間貯蔵」とするが、計画の修正が相次いで工場は長年稼働できていない。にもかかわらず、国は使用済み燃料を全て再処理する目標を掲げ続ける。国民の負担は増し、(核兵器に転用でき)安全保障上の懸念となるプルトニウムがさらに蓄積する恐れがある。

 国も電力会社も失敗を認められない、核燃料サイクル政策のひずみがある。核燃料サイクルそのものについて見直しを含めた議論が要る。

すずき・たつじろう
 1951年大阪府生まれ。米マサチューセッツ工科大修士課程修了。東京大で工学博士号取得。内閣府原子力委員会委員長代理や長崎大核兵器廃絶研究センター長を歴任。核兵器廃絶を目指す科学者の世界的組織、パグウォッシュ会議の評議員も務める。

(2023年10月26日朝刊掲載)

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