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ガザ市民の命 奪わないで 広島市立大院生 自身はユダヤ系米国人 原爆ドーム近くで連日訴え

 広島市立大大学院生のレベッカマリア・ゴールドシュミットさん(36)=安佐南区=は原爆ドーム近くに連日足を運び、イスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの攻撃に抗議の意を表している。ユダヤ系米国人で、曽祖父母はホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)犠牲者だ。イスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦闘開始から、7日で1カ月。「いかなる市民の殺りくも、支持しない」。懸命の訴えを続けている。(小林可奈)

 ゴールドシュミットさんは夕方に同志数人とドーム近くに集まり、自らの意志を発信している。10月27日には約50人が集まった抗議集会に参加。「ジェノサイド(民族や宗教による特定集団の殺害)をやめて」と書かれたプラカードの前で「パレスチナの自由と、イスラエルによる占領の終止符を」と声を上げた。

 父方の曽祖父母は第2次世界大戦中、ドイツ国内からアウシュビッツ強制収容所に送られたまま、帰らなかった。父はイスラエル出身。自身は米国で生まれ、シカゴのユダヤ人学校に通った。パレスチナ問題について学んだ記憶はないという。

 転機は、地元公立高に入学後の2003年。米軍の侵攻で始まり、イスラエルを含めた中東の緊迫が世界を揺るがしたイラク戦争だった。

 「中東の歴史をもっと学ばなければ」。1948年のイスラエル建国は知っていても、そのために故郷を追われて難民となった人々の存在と、パレスチナ問題の背景には思いが至っていなかったと気付かされた。ただ「ユダヤ人として身に付いた考えと向き合い、問い直す作業はたやすくなかった。何年も費やした」とも明かす。

 芸術家として創作に打ち込む傍ら数年前から、占領と封鎖に苦しむパレスチナ人の自由を求める集会に参加している。「この現状に疑問を持つユダヤ人は大勢いる。私だけじゃない」

 ハワイ大マノア校から「平和と芸術を学びたい」と広島市立大大学院へ移り、2021年から広島で暮らす。イスラエルが事実上の核兵器保有国であることへの危機感も、ヒロシマから発信する決意を支えている。

 イスラエル軍の攻撃が苛烈さを極める中、7日は創作活動のため滞在中の沖縄で、パレスチナとイスラエル双方の平和を願いキャンドルをともす。いかなる市民の命も分け隔てなく、悼むつもりだ。

(2023年11月6日朝刊掲載)

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