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核兵器関連企業に投融資NO! NGO啓発プロジェクト 効果じわり 締約国会議へ議論喚起

 国際非政府組織(NGO)が、核兵器の開発や製造に関わる企業に投融資する金融機関を調べ、市民に啓発するプロジェクト「Don’t Bank on the Bomb(核兵器に金を預けるな)」を続けている。核兵器産業への資金提供を止め、廃絶への圧力にする狙い。27日に米ニューヨークで始まる核兵器禁止条約の第2回締約国会議に合わせ、議論を喚起する。(小林可奈)

 プロジェクトは、2012年にNGO「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN(アイキャン))が最初の報告書を出してスタート。オランダのNGO「PAX」なども携わり、金融機関の発行物や証券取引所の書類を調べ、金融機関が核兵器関連企業にどれだけ投融資したかを明らかにしている。これまでに13件の報告書が出た。

 22年版では、20年1月から22年7月までに28カ国・地域の306機関が、8カ国の航空機大手や防衛大手など核兵器関連企業24社に7460億ドル(約110兆円)以上を投融資したと指摘。上位10機関を含む167機関は米国が占めた。米国を除く27カ国・地域に限った順位では、みずほフィナンシャルグループ(FG)を筆頭に日本から4機関が上位10機関に入った。

 一方、23年版によると、55機関が核兵器関連企業へ関与を禁じる方針を定め、投融資もしていなかった。別に54機関は、制限方針を掲げながら投融資を続けているなど改善の余地があるとし、日本では唯一りそなグループが該当した。

 21年発効の核兵器禁止条約は、核兵器に関するあらゆる行為を違法化した。締約国会議の際に現地である関連行事では、NGOが投融資の問題を国際社会に発信する。

自分にできる行動を 担当のスナイダー氏に聞く

 プロジェクトに携わってきたICANのプログラムコーディネーター、スージー・スナイダー氏に、意義や成果、市民の役割を聞いた。

  ―なぜプロジェクトを続けているのですか。
 多くの金融機関は、クラスター(集束)弾や地雷のような非人道的な兵器にもはや投資していない。核兵器も同じ状況を目指している。

  ―調査報告で資金の流れを可視化する意義は。
 核兵器というと政府の問題と思われがちだが、違う。民間も製造や維持に大きく関わっている。

 また、核兵器を持つ9カ国の人々の税金だけでなく、世界の至る所のお金が核兵器産業につながっている。人々がこれに気付き、行動することが変革を生む。実際、核兵器関連企業に投融資しないという方針を持つ機関は、プロジェクト開始当初の35から100以上に増えた。

  ―どうすれば市民は金融機関の投融資を監視できますか。
 多くの金融機関は持続可能性に関する経営リポートを作っている。これに核兵器の項目を加え、方針や投融資の変化を記すようにすべきだ。市民はリポートを見たり、投資家たちと連携したりして、履行状況をチェックするのが大切だ。

  ―市民の声も力になりますか。
 もちろんだ。各国の市民が、地元の銀行に対し「核兵器関連企業に投融資を続けるなら、預金を他の銀行に移す」と迫るなど、行動を起こしている。私たち市民は金融機関の顧客。私たちが彼らを必要としている以上に、彼らが私たちを必要としている。

 プロジェクトのウェブサイトで、金融機関への電話のかけ方など市民向けのさまざまな手段を公開している。自分にできる行動をとってほしい。

  ―核兵器禁止条約は核兵器を巡るお金の流れに影響していますか。
 核兵器関連企業に投融資しない理由に禁止条約を挙げた金融機関もある。条約を批准した国の政府系ファンドは積極的に手を引いている。核兵器関連企業でも、株主が年次総会で条約に関連した質問をするようになった。米国と英国の計2社は核兵器製造に関する業務から撤退した。禁止条約の発効を受け、見えてきた成果だ。

(2023年11月6日朝刊掲載)

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