×

ニュース

「防空指揮所」間取り推定 呉の旧海軍地下施設 広島工大と呉高専のチーム

作戦室や暗号室 小説手がかりに

 呉市の海上自衛隊呉基地内に残る旧海軍の地下施設を研究している広島工業大(広島市佐伯区)と呉高専(呉市)のチームが、内部の様子を推定した。当時の史料が乏しい中、呉市史でも紹介されている小説の記述を手がかりに作戦室や暗号室などの配置を明らかにした。(新本恭子)

 地下施設は海自呉地方総監部第1庁舎の南約200メートルにある。旧海軍呉鎮守府の「防空指揮所」だったとみられる。

 広島工業大の光井周平准教授(建築構造)や呉高専の上寺哲也准教授(機械工学)の研究チームは、呉地方総監部との過去の共同調査で施設の中心の空間は巨大なかまぼこ形(幅15メートル、奥行き43メートル、高さ最大8・8メートル)と結論付けている。今回はこの空間に小説の記述を当てはめる形で、各部屋の配置を学生が図面に起こした。

 手がかりにしたのは、指揮所で勤務経験があった小説家宮内寒弥(1912~83年)の「立春」「遺影」の2作品。「立春」では「ルイ王朝式椅子などを置いた『作戦室』その両側に『情報発令室』『一斉指令室』」「ラッタル(階段)を降りて『幕僚室』」などと、内部の2階構造を細かく記す。

 光井准教授は「小説を基にした仮説ではあるが、他の勤務経験者の証言や手記と照らし合わせても矛盾はない」とする。

 防空指揮所は旧海軍が敵機の情報を把握し、防空作戦を指揮する拠点だった。広島原爆戦災誌によると、1945年8月6日午前8時ごろに米軍機の広島接近をつかみ、警戒警報を発令している。光井准教授は「施設の歴史的な意味をより鮮明に後世に伝えられる」と意義を強調する。

(2023年11月3日朝刊掲載)

年別アーカイブ