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戦争の惨状 今こそ伝える 岩国の佐村さん入市被爆証言 地元団体聞き取り 「戦争展」で公開

 広島で78年前に入市被爆した岩国市藤生町の佐村昭人さん(93)が当時の体験を初めて証言し、同市の平和団体「岩国クスの会」が聞き取った。同会は、ふれあい交流館西岩国(同市錦見)で19日まで開催中の「原爆と戦争展」で、聞き取りをまとめた文書を公開している。

 佐村さんは旧国鉄職員として働き始めた15歳の時、呉市の広駅ホームできのこ雲を見た。2日ほど後、鉄橋修復作業のため広島市の広島駅付近を訪れて入市被爆し、惨状を目の当たりにした。

 「兵隊さんたちが道路の真ん中で死んでいるのを見ました」「『水をくれー』『水をくれー』と懇願されるので、かわいそうにと思って水を飲ませてあげたら、次々と4人の女の人が亡くなってしまいました」。記憶をたどり証言した。

 十数年前から戦争展を開いている同会の落合紀久子さん(75)が7月、佐村さんの長女由美子さん(64)から、佐村さんが被爆体験を人前で話したことがないと聞いたのがきっかけ。「ぜひ聞かせてほしい」と依頼し、佐村さんが応じた。

 佐村さんは8月、落合さんたち会員たち5人に約2時間語った。右耳が不自由なため時折、由美子さんの説明を交えながらゆっくりと話した。記憶を失っている部分もあり、落合さんは「異常な心理状態だったのでは」と推し量る。証言をB5判2枚にまとめた。

 佐村さんは原爆と戦争展の会場を訪れた。世界各地で戦火が広がる現状に心を痛める。「戦争はやっちゃあいけん」。そう訴えた。(川村奈菜)

(2023年11月16日朝刊掲載)

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