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卒業生の被爆体験「伝承」 広島の皆実高 生徒会 大阪の児童に「平和を大切に」

 皆実高(広島市南区)の生徒会が、同校の前身である県立広島第一高等女学校(第一県女)の卒業生から被爆体験を聞き、さらに若い世代へ受け継ぐ試みを始めている。10月末、修学旅行で広島を訪れた大阪市立平野小の児童を前に、第一県女2年生の時に被爆した河田和子さん(92)=同区=の体験を伝えた。

 生徒会の1、2年生11人は、体育館で6年生117人を迎え、78年前の河田さんの被爆状況をパワーポイントを使って説明。河田さんは爆心地から約2・5キロの学徒動員先の工場で原爆に遭い、市中心部から逃げて来る負傷者の惨状を目にしたという。戦後は体の不調が続いたことも紹介し、「当たり前にある平和な時間を大切に、今日聞いたことを家族や友人に伝えて」と河田さんに代わって呼びかけた。

 続いてグループに分かれ、児童と意見交換。この日は河田さんも会場を訪れ、様子を見守った。皆実高2年で生徒会長の田中春麗さん(17)は「河田さんの被爆後の心情を分かりやすい言葉で伝えた。私たちの思いも込めて継承活動を続けたい」と話す。平野小の柳香絵乃さん(11)は「戦争は怖いものだと感じた。友だちと仲良くしたい」と率直な感想を語っていた。

 後輩たちの姿を見つめていた河田さんは「年を取った被爆者が体験を大勢に語るのは体力的にも難しい。若い世代が命の尊さを代弁してくれてうれしい」と涙ぐんだ。

 皆実高の取り組みをインターネットで知った平野小教員が、修学旅行に合わせ平和学習を依頼。今回の交流が実現した。(新山京子、上田光)

(2023年11月20日朝刊掲載)

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