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サミット後 被爆地は問う 来月10日 研究者・市民活動家たち国際シンポ 核軍縮合意文書や「成果」論じる

 広島市立大広島平和研究所(平和研)と中国新聞社、長崎大核兵器廃絶研究センター(RECNA)は12月10日、国際シンポジウム「核戦争の危機と被爆地―G7広島サミットを踏まえて」を広島市中区の広島国際会議場で開く。初の被爆地開催となった5月の先進7カ国首脳会議(G7サミット)で見えてきた課題を研究者、市民活動の当事者、記者たちが論じ合う。(金崎由美)

 ロシアがウクライナへの侵略を続け、パレスチナ自治区ガザでは人道危機が悲惨を極めている。戦火がやまず、核兵器使用も危惧される世界に向けて、平和を訴えてきた広島から取り組むべきことを共に考える。

 広島サミットでは、核保有国の米国、英国、フランスを含む7カ国のほかインドなどの首脳が集った。サミットでは初となる核軍縮の合意文書「広島ビジョン」を発表。だが核兵器への依存を明言する文言もあり反発も呼んだ。

 東京大の石田淳教授(国際政治学)が基調講演し、同ビジョンで注目すべきいくつかのキーワードを読み解く。例えば「全ての者にとっての安全が損なわれない形での核兵器のない世界」。実際には何を意味するのか。国家の安全保障と、戦争被害の「受忍」を強いられる市民にとっての安全との関係などについてひもとく。

 ウクライナのゼレンスキー大統領の広島訪問でもサミットは注目された。被爆地の市民が国際情勢の厳しさを間近で痛感する機会でもあった。「ウクライナ戦争と国際平和秩序の行方」をテーマに平和研の吉川元特任教授が報告する。

 市民が政策提言や地域振興など実に多様な形で国レベルの会議に関わったことも、サミットの成果だろう。中国新聞社の田中美千子編集委員は開催決定から約1年間、関連報道を担当した。被爆者への取材を重ねた中で、核兵器廃絶を悲願とする被爆地と、日本など「核依存国」との間の溝をどう感じたかを語る。

 非政府組織(NGO)ピースボートの畠山澄子共同代表は、各国の市民が東京に集った「C7サミット」に参加。核兵器問題に関する政策提言づくりや首脳への働きかけに力を注いだ。市民社会の視点から廃絶への課題を論じる。

 基調講演者と報告者による討論では、平和研の加藤美保子専任講師をモデレーター(司会)に、国際人道法を研究するRECNAの河合公明副センター長が加わる。サミットに出席した首脳らと原爆資料館で面会した被爆者、小倉桂子さんも平和のメッセージを発信する。

 午後1時半~4時45分、広島国際会議場地下2階ヒマワリ。同時通訳、手話通訳付き。入場無料、事前申し込み不要。平和研究所☎082(830)1811。

(2023年11月27日朝刊掲載)

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