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[核兵器禁止条約 第2回締約国会議] 保有国の関与 どう議論

 米ニューヨークの国連本部で27日~12月1日にある核兵器禁止条約の第2回締約国会議には、批准や署名をした核兵器非保有国の政府代表たちが集い、核兵器廃絶や核被害者の支援について、昨年6月の第1回会議で定めた行動計画を踏まえて議論する。各地で戦闘が続き、核使用を示唆する言動が繰り返される中、核保有国や依存国をどう巻き込むかが焦点となる。(宮野史康)

国際情勢 各地で戦闘 続く使用示唆

 核を巡る国際情勢は混迷を深めている。イスラム組織ハマスとの戦闘を巡り、事実上の核保有国であるイスラエルの極右閣僚は今月5日、パレスチナ自治区ガザへの核攻撃を「選択肢の一つ」と発言した。広島県被団協の箕牧(みまき)智之理事長(81)は「被爆者は今も病気に苦しんでいる。核が使われれば環境回復にも時間がかかるのを知らないのか」と憤る。

 ウクライナに侵攻したロシアのプーチン大統領も核使用を示唆し、2日には包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准を撤回した。そもそも米国と中国はまだ批准していない。広島市で5月にあった先進7カ国首脳会議(G7サミット)は、初めてまとめた核軍縮文書「広島ビジョン」でCTBT発効の意義を強調したが、遠のくばかりだ。

 広島ビジョンは核兵器禁止条約に触れなかった。議長を務めた岸田文雄首相は、9月の国連総会で「核兵器のない世界へ、核拡散防止条約(NPT)体制を維持、強化し、現実的、実践的な取り組みを強化する」と演説。日本政府は締約国会議へのオブザーバー参加を2回続けて見送る。

会議の論点 参加国数 成否の指標

 禁止条約は核兵器を持たない69カ国・地域が加盟している。署名済みを含めれば97カ国・地域で、世界のほぼ半数だ。推進国の外交筋は「条約が確実に機能していると示したい」と狙う。

 第1回会議では、核兵器の非人道性と廃絶を訴えるウィーン宣言を採択し、50項目からなる行動計画を定めた。うち「核被害者援助と環境の修復」は議論が進んでいる。今夏のNPT再検討会議第1回準備委員会が議長の考察文書で言及。国連総会の第1委員会(軍縮)は10月、一層の国際協力を促す決議をした。第2回会議では、信託基金の設立が取り上げられる見込みだ。

 一方、難題が「締約国の拡大」だ。第1回会議後、新たに署名したのは7カ国、加盟したのは4カ国。第2回会議は、参加国数が成否を図る指標の一つになる。ドイツなど米国の「核の傘」の下にある複数の国はオブザーバー参加する構え。加盟した場合の核兵器の全廃期限を10年とされる保有国は背を向け続けている。批准済みのパレスチナの言動も注目される。

 禁止条約を推進する非政府組織(NGO)「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN(アイキャン))の川崎哲(あきら)国際運営委員は「戦争が広がり核の危機がかつてなく高まる今、市民と国家が協力して、世界が進むべき道をはっきりと示す会議にしたい」と意気込む。

核兵器禁止条約
 核兵器の開発、保有、使用、威嚇などの一切を禁止する初の国際条約。前文に「ヒバクシャの受け入れ難い苦しみに留意する」と明記し、核兵器の使用や実験による被害者の支援などを締約国の義務とする。核兵器の非人道性に関する認識の広がりや核軍縮の停滞を背景に、オーストリアなど核兵器を持たない国が非政府組織(NGO)などと連携して制定を主導。2017年7月に122カ国・地域の賛成により国連の交渉会議で採択され、21年1月に発効した。

(2023年11月26日朝刊掲載)

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