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第五福竜丸 埋もれた史実に光 岡山出身・坂手洋二主宰の燐光群 ハレノワで来月

 劇作家・演出家の坂手洋二(61)が主宰する燐光群(りんこうぐん)の創立40周年記念公演「わが友、第五福竜丸」が12月9、10の両日、岡山芸術創造劇場ハレノワ(岡山市北区)である。米国の水爆実験で静岡県のマグロ漁船が被曝(ひばく)した1954年のビキニ事件から、東京電力福島第1原発の処理水放出まで。低線量被曝を巡る当事者の葛藤や埋もれた史実に光を当て、未来への在り方を問う直球の群像劇だ。

 原水爆禁止署名運動が広がる契機となった事件から来年で70年。第五福竜丸の記述が広島市立中の平和教育プログラムから削除されるなど記憶の風化も懸念されている。

 「被害は隠され、忘れられていく。ビキニも福島も過去のことにされていくのは切ない」と坂手。事実を丹念に掘り起こし、ユーモアを交えながら、見る側の記憶に刻み込む力のある物語を編んだ。被曝時の船上を再現する終盤は圧巻だ。

 被曝した漁船員の裁判が続く高知、核実験場にされたマーシャル諸島にも目を向ける。「いろいろなことを同じ舞台に上げてみることで、見えてくるものが必ずある」

 坂手は岡山市出身。ハレノワ開館へ向けての検討にも加わった。「創造型の劇場として成長できるようにお手伝いしたい」とエールを送る。

 出演は円城寺あや、鴨川てんし、広島市出身の三浦知之たち。9日午後7時、10日同2時開演。3千~千円。ペア券もある。ハレノワ☎086(201)2200。(渡辺敬子)

    ◇

 11月27日午後7時から、坂手が作品について語る「プレトーク」がハレノワである。東京都立第五福竜丸展示館の市田真理学芸員、岡山で活躍する劇作家河合穂高さんを交えて意見交換する。無料。

(2023年11月25日朝刊掲載)

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