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社説・コラム

『ひと・とき』 洋画家 田谷行平さん 思い出す左髪子の肉声

 広島市西区の泉美術館で開かれている特別展「広島を愛した反骨の画人 浜崎左髪子(さはつし)」のトークイベントで、その人と画業を語った。日本画家の浜崎左髪子(1912~89年)は30歳年上。自らが師事した洋画家の福井芳郎と親しかったため、直接の交流があった。

 左髪子は広島の小話を絵馬にするなど、郷土愛豊か。地元企業に頼まれて看板や題字、包装紙も手がけ、広島弁そのもののような独特の書体も愛された。「広島弁のうちでも、ちょっと柄の悪い方のをしゃべった」。好きだった散歩での会話が「創作のヒントにもなっていた」とみる。

 「きれいな色にこだわった」。原爆ドームやバラック街も、発色鮮やかな美しい絵に描いた。「美しいから描く。汚い絵で悲惨を強調するようなことは、発想からしてなかったと思う」。絵の道の後進として、無言の教えを受けた感謝と敬意を込めた。

 12月3日までの同展には、多彩な創作をたどる約150点が並ぶ。月曜休館。(道面雅量)

(2023年11月25日朝刊掲載)

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