×

ニュース

被服支廠 国重文指定へ 文化審答申 全棟保存確実に

 国の文化審議会は24日、広島市南区にある最大級の被爆建物「旧陸軍被服支廠(ししょう)」の全4棟を国の重要文化財(重文)に指定するよう盛山正仁文部科学相に答申した。来年1~2月に答申通り指定される見通しで、広島県は文化庁の補助金を使って建物の耐震化を進める。存廃議論で揺れてきた「物言わぬ証人」の全棟保存が確実となった。

 被服支廠は旧陸軍の軍服や軍靴を作っていた施設。1914年の完成で爆心地の南東2・7キロにあり、被爆後は臨時救護所となった。13棟のうち4棟がL字形に残り、広島県が1~3号棟、国が4号棟を所有している。

 柱や梁(はり)は鉄筋コンクリート造り、外壁はれんが造りで建造物としての希少さが評価された。旧陸軍の被服関連施設では現存する唯一の遺構であり、歴史的価値も高いとされた。被爆建物では不動院(広島市東区)と国前寺(同)に続く国重文指定となる。

 県は2019年12月、所有3棟のうち2棟を解体する案を公表した。しかし被爆者たちの反対意見を受け、21年5月に耐震化する方針に転換。国も22年5月、残る1棟を耐震化すると発表した。

 県は修理費の半額を補助する文化庁の制度を使って耐震工事を進める方針。広島市も一定の負担をする方向で協議している。着工は県の3棟は24年度以降の見通しで、国の1棟は24年度を予定する。

 岸田文雄首相は8月の平和記念式典後、耐震化への財政支援に前向きな姿勢を表明し、県は9月に重文指定を申請するなど働きかけを強めていた。(河野揚)

(2023年11月25日朝刊掲載)

年別アーカイブ