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[核兵器禁止条約 第2回締約国会議] 核抑止論「道理に反する」 フアン・ラモン・デラフエンテ議長に聞く

 核兵器禁止条約の第2回締約国会議で議長を務めるメキシコのフアン・ラモン・デラフエンテ前国連大使が27日の開幕に合わせ、中国新聞の質問に書面で答えた。条約の着実な履行を支えるのが議長の役割だと強調し、核抑止論は「道理に反している」と強く否定した。(ニューヨーク宮野史康)

  ―会議では、どんな成果を上げたいですか。
 条約が適正に機能し、会議のプロセスが今後も適切に続いていくように導きたい。条約の履行と締約国の拡大を重視している。核兵器を禁止する理由は、壊滅的な人道上の結末を引き起こす点にあるとも伝えたい。

 議論の実質的な成果は政治宣言で示す。複雑な国際安全保障の現状を踏まえた明確なメッセージを打ち出したい。

  ―世界で核抑止論を重視する動きがあります。
 確かに近年の情勢は国際的緊張を高めているが、残念ながら何十年も前から核兵器使用の危険性は変わっていない。核兵器武装国は、有意には備蓄を減らさず、むしろ強化し、近代化してきた。こうした現状と、核兵器による人道に背く結末が、禁止条約への加盟を促している。

 世界の大半の国は、核兵器を持たず、誤った抑止論に依存していない。禁止条約への加盟は自然の成り行きだ。人類の破滅や環境破壊を伴う安全保障と抑止論があり得るのか。道理に反しているとしか言いようがない。

  ―日本政府のオブザーバー参加見送りの受け止めは。
 日本は多国間協調に根差し、核兵器の議論に積極的に関わっている。声を上げる特別な役割がある。議長として、禁止条約に加盟する準備ができていない国も参加できる環境は整えたと自負している。

  ―核兵器の廃絶へ、被爆者や被爆地の市民には何ができますか。
 核兵器の使用、実験の生存者の声は、禁止条約を最も力強く支えている。多国間協調では政府が主要な役割を果たすが、変化を生み出すのは人々だ。被爆者や核実験で影響を受けた人たちの証言は代え難く、政策決定者は真剣に耳を傾けてほしい。

Juan Ramōn de la Fuente
 1951年、メキシコ市生まれ。保健相やメキシコ国立自治大学長を経て、2023年9月まで国連大使を務めた。

(2023年11月28日朝刊掲載)

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