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社説・コラム

朝凪(あさなぎ) 「非武装地帯」で考えた

 平日の昼間というのに街はかまびすしい。今月会議出席のため訪れた韓国ソウルでいくつものデモと遭遇した。同行のソウルっ子によれば福祉政策などへの異議申し立て。市民が声を上げるのは当然なのになぜそんなに珍しがるのかと冷ややかだ。

 その彼女が足を止めたのが、イスラエル軍によるガザ侵攻に抗議するデモ行進。いわく「70年前、ここも戦場だった。ソウル市民には人ごとじゃない」。

 翌日、北朝鮮との軍事境界線に近い非武装地帯に赴き、その言葉をかみしめた。朝鮮戦争は今も休戦中。敷設地雷を知らせる標識、北朝鮮側から掘られた地下トンネル…。「戦時」を実感させる光景が広がっていた。

 パワーゲームの挙げ句、軍事境界線付近でふたたび緊張が高まっている。傷つくのはいつだって市井の民なのに。(平和メディアセンター・森田裕美)

(2023年11月28日朝刊掲載)

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