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[核兵器禁止条約 第2回締約国会議] 「安全保障の懸念」精査へ 決定事項草案 独は抑止の重要性主張

 米ニューヨークの国連本部で開かれている核兵器禁止条約の第2回締約国会議は29日、決定事項の草案を示した。核兵器の存在や核抑止が引き起こす「安全保障上のまっとうな懸念」について精査を始めると表明。ただ、依存国のドイツなどはウクライナ情勢を背景に核抑止の重要性の高まりを主張している。(ニューヨーク発 宮野史康)

 草案では、安全保障の懸念を精査するまとめ役の国を指名し、2025年の第3回会議までに報告書を出すよう定めている。核保有国や依存国に核抑止からの脱却を迫る狙い。禁止条約を推進する中心国のオーストリアが提案していた。

 また、核被害者の援助と被害地域の環境回復に向けた国際的な信託基金の設立を巡っては、作業部会が在り方の議論を深め、報告すると明記。「第3回会議で信託基金を設立する検討を優先する」とした。

 この日の一般討論では、米国の「核の傘」の下にあり、オブザーバー参加したドイツ、ノルウェー、ベルギーが発言した。いずれも禁止条約への加盟を明確に否定。ドイツは「ロシアの好戦的な姿勢が、核抑止の重要性を高めた」とした。

 一方、ドイツは核被害者の援助と環境回復で、具体的な事業に協力する意向を表明した。具体例として、国際協力と研修の支援や核実験の影響に関する統計調査、放射線が女性に与える影響の調査を挙げた。

「被爆者の願い 打ち消しかねない」 広島市長、演説で警鐘

 平和首長会議の会長を務める広島市の松井一実市長が29日、核兵器禁止条約締約国会議の一般討論で演説した。「被爆者の切なる願いを根底から打ち消しかねない」と国際情勢に警鐘を鳴らし、禁止条約の実効性を高めるよう訴えた。

 核の威嚇が繰り返され、核兵器保有国と非保有国の間の不信感も高まっていると指摘。被爆者は「こんな思いを他の誰にもさせてはならない」と願っているとした上で、各国に核拡散防止条約(NPT)と禁止条約が「補完関係を保ちながら機能するための取り組み」を求めた。

 一般討論では、副会長で長崎市の鈴木史朗市長も「核兵器が人間にもたらす結末を知ることが、世界を変える原動力になる」と強調。元高校生平和大使で東京大2年の牟田悠一郎さん(21)=広島市東区出身=は「悲劇を繰り返さないために、核兵器の廃絶へ一緒に取り組みたい」と誓った。

(2023年12月1日朝刊掲載)

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