×

社説・コラム

社説 米軍オスプレイ墜落 飛行停止し原因究明徹底を

 十数年にわたる不安が的中した重大事故と言えよう。米空軍の輸送機CV22オスプレイがおととい鹿児島県・屋久島沖で墜落し、搭乗員8人のうち1人の死亡が確認された。トラブルが絶えないオスプレイの事故で、国内初の死亡ケースである。

 多くの島民らが炎と煙を上げて旋回する機体や、飛び散った残骸を目撃した。陸上なら大惨事の恐れがあった。

 日本政府が米国に飛行停止を要請したのは、翌日にずれ込んだ。あまりにも手ぬるい。その間、沖縄でオスプレイの運用が確認された。全機の飛行停止を直ちに実現させ、原因究明が徹底されない限り飛行を許してはならない。

 墜落機は、岩国市の岩国基地から沖縄県の嘉手納基地に向かう予定だった。ところが途中、屋久島空港への緊急着陸を求めたという。左側のエンジンから出火したとの目撃情報もある。特殊な訓練や実戦でもない、単なる飛行中にこれほどのトラブルが発生したなら深刻だろう。

 在日米軍のオスプレイは2012年に配備が始まった。現在は横田基地(東京)にCV22が6機、普天間飛行場(沖縄県)に海兵隊用のMV22が24機ある。ヘリコプターのように垂直で離着陸し、固定翼の飛行機並みに高速で長距離を移動できる。

 複雑な構造で高度な操縦技術が求められ、それゆえ事故が絶えない。墜落による死亡事故は開発段階から相次ぎ、この2年だけでも米国やオーストラリア、ノルウェーで発生している。国内では16年に沖縄県名護市沖に不時着水して大破し、2人が負傷した事故が記憶に残っていよう。

 看過できないのは事故原因として、機体の構造的な問題が指摘される点だ。22年6月に米国で起きた墜落死亡事故の報告書は、エンジンと回転翼をつなぐクラッチの作動不良が引き起こしたエンジンの損傷だと明らかにしつつ、根本的な原因は不明とした。しかし、部品交換という対応策で済ませた。

 欠陥を抱えたまま、日本国内を飛行されては困る。

 米軍基地のある地域住民や自治体から、かねて懸念の声が上がっていた。事故直後に沖縄県の玉城デニー知事は、飛行停止を求めた。山口県の村岡嗣政知事は「安心安全に大きく関わる」と、再発防止策を求めた。当然である。

 日本政府は、危機感をくんでいるのか。当初は事故をパイロットが制御できる状態の「不時着水」と説明した。一夜明け、ようやく「墜落」と改めた。米側の説明に依存して事故を矮小(わいしょう)化するようで、主権国家として国民の安全を守る態度ではない。正確な情報を伝える姿勢にも欠ける。

 日米両政府は南西諸島防衛で、オスプレイ配備を強化する方針を鮮明にしてきた。陸上自衛隊でも基本構造が同じV22を既に暫定配備し、佐賀空港(佐賀市)に移して17機に増やす計画を進める。

 米国に対して毅然(きぜん)と、事故原因の究明や情報公開を求める方が先だ。オスプレイ運用の総点検をし、計画見直しもためらうべきではない。

(2023年12月1日朝刊掲載)

年別アーカイブ