×

社説・コラム

天風録 『鉄のミサゴ』

 先月掲載された本紙の「読者の写真」に「珍味捕獲」と題した作品があった。タカの仲間ミサゴがフグを捕まえた瞬間を見事捉えている。フグの膨らんださまが何ともユーモラスだ▲海や川の近くにすむミサゴは魚のハンターである。狙いを定め、水面を目がけて急降下し、鋭い爪でつかむ。最近は都市部でも増えたらしい。ただ、夫婦で子育てをする家族思いのミサゴなら、決して無理はするまい▲その英語名を冠する機体に、何があったのだろうか。米軍の垂直離着陸輸送機オスプレイが、鹿児島県屋久島沖に墜落した。8人を乗せて岩国基地を飛び立った後、世界自然遺産の島の玄関、屋久島空港の目の前で。街中だったらと思うと、背筋が凍る▲開発段階から死亡事故が相次いだのに安全性は確保されていると、うのみにしたのは政府である。在日米軍への配備が進み、陸上自衛隊も採用。今では日本の空をわが物顔で行き来する▲左エンジンから火が出た、逆さまに落ちた、と住民や漁業者の目撃談は生々しい。それなのに政府は当初、墜落ではなく「不時着水」と米軍の言い分をまたも、うのみにした。欠陥を抱えた〈鉄のミサゴ〉を止められるのか、心もとない。

(2023年12月1日朝刊掲載)

年別アーカイブ