×

社説・コラム

『ひと・とき』 作曲家 上田益(すすむ)さん 戦争や災害の犠牲者 歌声で追悼

 広島、神戸、仙台など全国7カ所で合唱団を結成し、戦争や自然災害の犠牲者を歌声で追悼する「レクイエム・プロジェクト」を主宰。今年、広島での活動が10周年を迎えたのを記念し、春、夏、秋の3回、平和記念公園(広島市中区)でメンバー約40人が祈りを込めて合唱した。「通りすがりの人々も含め、大勢に聴いてもらえてよかった」

 大阪府出身。幼少時、祖父が住職を務めていた高野山成福院(和歌山県)で丸木位里・俊夫妻の壁画を見て、衝撃を受けた。「広島の惨状を描いた絵だった。私の原点になった」

 京都市立芸術大で作曲を学び、阪神・淡路大震災を機に始まった「神戸ルミナリエ」の音楽を長年、担当してきた。「歌うことで被災地の思いを共有したい」と、2008年に神戸で市民合唱団を設立。活動の輪は徐々に全国に広がった。

 現在は東京を拠点に作曲家として活動。同プロジェクトで歌う合奏曲の多くを作曲する。17年には、広島の被爆者で詩人の上田由美子さんと一緒に合唱曲「生きとし、生けるものへ」を制作。被爆80年の25年に向けて、新作を準備中だ。「由美子さんに新たな歌詞を書いていただく。次世代に歌い継いでもらえる曲にしたい」(西村文)

(2023年12月1日朝刊掲載)

年別アーカイブ