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社説・コラム

朝凪(あさなぎ) 消えた笑顔 消せぬ思い

 11月中旬、オーストラリアに住む親戚一家が広島に来た。7~14歳の子ども3人は初めての広島。宮島のシカと触れ合ったり、お好み焼きを頰張ったりする姿をほほ笑ましく思った。

 しかし、原爆資料館(中区)を訪れると、それまでの様子は一変。3人から笑顔が消えた。14歳の長男は広島や長崎のことを勉強したというが、原爆の悲惨さを伝える実物資料に衝撃を受けたのかもしれない。資料館に誘ったのは私だ。一家が暮らす首都キャンベラに戦争記念館はあるが、展示品は戦闘機や武器が中心。原爆の恐ろしさも感じてほしいと思ったからだ。

 資料館を出ると、3人はけろっとし「ゲームセンターに行く」と無邪気に言った。誘った手前、少しほっとした。戻った笑顔にふと思う。戦争で子どもの笑顔が消えるなんて、あかん。(社会担当・木村健太)

(2023年12月2日朝刊掲載)

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