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連載・特集

第11回広島新県美展 大賞の輝き <下> デザイン 小島信行さん(59)=廿日市市

廃材でハト 祈りを託す

 タイトルは「ECO & PEACE」。ペットボトルのふた約350個を使って、パネル上にハトを形づくった。廃材を利用した強いメッセージ性が評価を集め、5度目の大賞を射止めた。

 制作当初は、ロシアによるウクライナ侵攻が念頭にあった。だが10月以降、パレスチナ自治区ガザでの戦火は終わりが見えない。「世界中のどこにでも、芸術を通じて思いを伝えたい人はいるはず」。ふたの一つ一つに哀悼の気持ちを込め、羽ばたくハトの姿に祈りを託した。

 新県美展には1991年からほぼ毎年出品してきた。平面作品で入賞・入選を重ねた一方、今回は初の半立体作品。人工知能(AI)が進歩する今、人間本来の身体感覚や創造性が失われるのではないか―。そんな懸念から、あえて手作業にこだわった。

 熊本市出身。広島農業短大(現県立広島大)を卒業後、広島市内のデザイン会社に就職。仕事の縁でグラフィックデザイナーの被爆者に出会い、凄絶(せいぜつ)な体験を耳にしてきた。「広島の表現者だからこそできることがある」と力を込める。(木原由維)

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 第11回新県美展の中央展(広島県、中国新聞社など主催)は16日から来年1月8日まで、広島市中区の広島県立美術館で開かれる。

(2023年12月6日朝刊掲載)

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