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父の被爆体験 初めて語る 元NHKアナ杉浦さん 家族伝承者に

 NHK元アナウンサーの杉浦圭子さん(65)=広島市安佐南区=が5日、家族の被爆体験を語り継ぐ市の「家族伝承者」としてデビューし、父親の被爆体験を人前で初めて語った。平和や原爆に関する番組づくりに長年携わった経験を生かし、自らの言葉でヒロシマを伝えていく。

 「熱線を受けた首や肩の皮膚はずるりとむけたそうです」。中区の原爆資料館で杉浦さんは、父清水良治さん(91)の写真を見せながら、47人の聴講者に語りかけた。

 清水さんは県立広島商業学校(現県立広島商業高)の1年生のとき、爆心地から約2キロの校庭で建物疎開作業に出かける準備中に被爆。大やけどを負い、現在の安佐南区八木の自宅まで歩いて帰ったという。杉浦さんは約50分間、父親が当時目にした惨状や心情を自らの声で代弁した。

 約1年の伝承者研修を受け、先月末でNHKを退職したのを機に活動を始めた。体験手記を朗読する広島放送局の番組「ヒバクシャからの手紙」を6年間担当し「誰一人として同じ体験はないと知った」。父親の体験を伝えようと決意。幼い頃に聞いた証言を本人から再度聞き取り、被爆後に自宅へ戻るまでの道のりを実際にたどるなどして原稿にまとめた。

 多くの被爆者と出会いながら「平和の願いを受け継いで、とバトンを渡された」と感じている。「人の命の重さに違いはないと示す『ヒロシマの羅針盤』を子どもたちに伝えたい」(新山京子)

(2023年12月6日朝刊掲載)

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