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[まちなかスタジアム] 熱き思い 森保一・日本代表監督に聞く 選手の熱 間近で感じて

広島の宝 活力に/平和学び胸に刻んで

  ―新サッカースタジアムが完成間近です。どんな思いですか。
 めちゃくちゃわくわくする。(サンフレッチェ広島の監督時代に)建設に向け、クラブの皆さんと欧州視察に行かせてもらったこともある。想像した未来が現実になって本当にうれしい。

 新スタジアムでは選手の息遣い、叫び声、ボールを蹴る音などを間近に感じることができる。サポーターのエネルギーと、選手のピッチで戦う熱を互いに感じられる空間になってほしい。

  ―Jリーグでも有数の「まちなかスタジアム」に、どういう役割を期待しますか。
 街のシンボルの一つ、宝として広島の皆さんの誇りになるもの。まずはサッカーで盛り上がり、皆さんの日常の活力にしてもらいたい。ただ、スタジアムは試合だけで使うものではない。文化、芸術、芸能、音楽などさまざまなイベントが可能だと思う。触れ合いの場になるとうれしい。

 また、スタジアムを訪れる方にはぜひ広島の歴史にも触れていただきたい。すぐ近くに平和記念公園と原爆ドームがある。二度と起こしてはいけない戦争、原爆の歴史がある。日本全国から一人でも多くの方が来て平和について学び、胸に刻んで帰ってもらえれば。

 アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)など国際試合が開かれる可能性もある。そうなれば海外からもサポーターが訪れる。世界各国から、広島の歴史を発信してくれる方々が来ることを願っている。今も世界では戦争、紛争が続き、尊い命と日常が奪われている。異なる価値観を認め合い、つながり合えることを、スタジアムから発信してもらえたら。

  ―2012年のリーグ初優勝でスタジアム建設の機運が高まりました。
 新スタジアムができることを願った広島市民として、サンフレのスタッフとして、自分にできることはやってきた。貢献できた部分は、ほんのちょっとあるかな、あればいいなと思っている。

 J1で3度優勝したことで、よりサンフレやサッカーの注目度が上がり、建設にも少なからず貢献できた思いはある。ただ、自分一人でやったことではない。選手、スタッフ、サポーター、広島市民、広島県民、全国の方々の思いがスタジアムにつながった。

  ―12年には署名活動にも取り組みました。
 たくさんの方が応援してくれていると、心強い気持ちになったのを覚えている。どうなるか分からないときに署名し、一緒に声を上げてくれた。スタジアム建設へ尽力している方々の背中を押し、サポートしてくれた。「みんなの思いが形になったんだよ」と、感謝の気持ちを伝えたい。

  ―日本サッカー協会の田嶋幸三会長は、代表戦開催へ意欲を示しています。
 実現していただければありがたい。もちろんサンフレが平和を発信する役割を担うが、日本代表も日本で起きたこと、広島で起きたことを世界に発信する。その思いを持って広島で試合ができればうれしい。(聞き手は山本堅太郎)

もりやす・はじめ
 1968年生まれ。長崎市出身。長崎日大高から87年に広島の前身マツダ加入。守備的MFとして日本代表でも活躍。2012年に広島の監督に就任し、3度の優勝に導いた。18年から現職。21年の東京五輪代表も率いた。

(2023年12月9日朝刊掲載)

[まちなかスタジアム] 熱き思い 想像していた未来 現実に サッカー日本代表 森保監督

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