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一部保存 3階建て新築へ 広島大本部跡地旧理学部1号館 市表明 費用 当初の3倍に

 広島大本部跡地(広島市中区)にある被爆建物の旧理学部1号館を巡り、市は13日、3階建ての正面棟の前半分を保存し、背後に同じ階数の建物を新築する方針を正式に表明した。1931年築の建物の意匠や歴史的価値を残せると判断した。概算費用は当初の約3倍となる63億円を見込む。(野平慧一)

 市によると、鉄筋3階建てE字形の1号館のうち、正面棟中央の玄関から左右に延びる廊下までの前半分をI字形に残し、耐震化する。後半分と残りの棟を取り壊した跡に3階建てを新築し、講義室や研究室、交流スペースとして約3千平方メートルを確保。完成後は、2024年1月に発足する「ヒロシマ平和研究教育機構」の拠点を置く。

 着工や完成時期は、23年度末までにまとめる機構の基本計画で詰める。概算費用の内訳は新築工事28億円、既存施設の耐震化22億円、土壌汚染対策7億円などで、14年にI字形保存で試算した18億5千万円から膨れ上がった。市が負担し、国の補助を見込む。

 市は17年に1号館を少なくともI字形に残す方針を決め、具体的な範囲を検討してきた。正面棟全部▽正面棟外壁と玄関ホール▽L字形―の3案も検討したが、必要な部屋の確保や建物の価値の保存が難しく、見送った。この日の市議会建設委員会では、市議から「取り壊す部分の外壁タイルなどの有効活用を」「財源の確保や施設規模は事前に十分な検討を」などの意見が出た。

 機構は世界有数の平和研究機関を目指し、市と広島大、市立大、広島平和文化センターが設立する。市都市整備局は「1号館の維持管理は市が主体的に担う必要がある。機構の関係者と具体的に協議する」としている。

(2023年12月14日朝刊掲載)

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