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社説・コラム

天風録 『飛行機の日』

 子どもの頃、不思議に思ったことがある。なぜ飛行機は飛べるのか―。理解できぬまま、たまに旅客機に乗るが、離陸前にやはり不安がよぎる。こんな大きく重い物体がどうして飛ぶのか、落ちやしないかと▲きょうは飛行機の日という。120年前、米国のライト兄弟が動力飛行機の初飛行に成功した。木製の骨組みに布を張り、エンジンを積んだライトフライヤー号で計4回試みた。最高記録は59秒間、約260メートルだった▲人類の夢をかなえた飛行機は日進月歩で発達。とりわけ軍隊は熱心に開発を進めたようだ。10年ほど後、第1次世界大戦に「新兵器」として投入する。機関銃を載せた戦闘機や爆弾を落とす爆撃機だ。以来、大勢の命を奪い続ける▲第2次世界大戦にはジェット機も。その後も音より速く飛んだり、レーダー探知を逃れたり。そんな戦闘機の開発を「進歩」と呼べるのか。一方、旅客機は便利ではある。巨大な機体が数百人もの乗客を運んでくれる▲だが今、「飛び恥」の言葉が飛び交う。二酸化炭素を多く出し、環境負荷が大きいことへの批判だ。市民の命を奪う爆撃機は飛び恥の極致だろう。恥ずかしくない乗り物へ飛行機を変えられないか。

(2023年12月17日朝刊掲載)

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