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社説・コラム

『この人』 ユニタール広島事務所長に就任した 三上知佐(みかみちさ)さん

 国連訓練調査研究所(ユニタール)広島事務所(広島市中区)の所長室から、原爆ドームと緑の木々に囲まれた市街地を望む。「広島の街が原爆の惨禍から復興した過程を見てもらいたい」。平和構築を担う世界の人材を育成する国連機関が被爆地にある意義をかみしめる。

 11月にあった所長就任会見では、中南米やカリブ地域からの研修生の受け入れに意欲を示した。障害者向けのオンライン研修にも取り組むという。

 大阪府出身。子どもの頃は米ソ冷戦のまっただ中だった。核戦争の不安を漠然と感じ、平和に貢献したいとの思いを強くした。大学時代に留学したメキシコで貧困に苦しむ人々を目の当たりにし、国連機関を志した。

 国連開発計画(UNDP)に20年余り勤めた。主に担当したのが中南米やカリブ地域。エイズウイルスの治療薬を必要な人に届け、紛争や災害からの復興、生計手段を確保するための支援にも力を尽くした。

 広島を初めて訪れたのは2005年ごろ。キューバ人の夫の希望で原爆資料館を見学し、「なぜ惨禍は避けられなかったのか」と衝撃を受けた。22年に日本へ帰国したのを機に「平和と復興の志を持つ人の学びを支援できる」とユニタール広島事務所長に応募した。

 「世の中に変化を求めるなら、あなた自身がその変化そのものになりなさい」。インドの指導者マハトマ・ガンジーの言葉を心に刻む。夫と高校生の長男の3人家族。ヨガや散歩の時間が息抜き。(太田香)

(2023年12月16日朝刊掲載)

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