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連載・特集

中国地方2023回顧 <下> 音楽や演劇 舞台芸術活発 広島・尾道ロケの映画も

 新型コロナウイルス禍が落ち着き、演劇やオペラなど舞台芸術の動きが本格化した。広島交響楽団は創立60周年を記念する公演を開催。中四国最大規模の劇場が岡山市にオープンし、地方文化の創造と発展に期待が高まった。広島を舞台とする映画の公開も相次いだ。(渡辺敬子、西村文)

●音楽

 創立60周年イヤーの広響は音楽総監督の下野竜也の指揮で、世界的なバイオリニストの五嶋みどりと初協演。市民楽団として出発し、日本有数の地方プロオーケストラへと成長した音色を印象付けた。2024年3月で退任する下野は地域貢献の功績で中国文化賞を受賞した。

 創立75周年を迎えたのはエリザベト音楽大(広島市中区)。被爆から2年後にエルネスト・ゴーセンス神父が創設した音楽教室は、中四国・九州で唯一の博士課程を備える音楽大に発展した。演奏会と式典を通し、ヒロシマに文化の灯火をともすという建学の精神をあらためて共有した。

 呉市出身の島谷ひとみと広島市安佐南区出身のHIPPY(ヒッピー)が発案した新しい音楽イベント「PEACE STOCK(ピース・ストック)78’」が11月、広島マリーナホップ(西区)であり、約1万人を集めた。

●舞台

 大中小三つの劇場を備えた「岡山芸術創造劇場ハレノワ」が9月、岡山市北区にオープン。こけら落としの栗山民也演出「メデア」など最新の舞台装置を生かした本格オペラの上演が相次いだ。

 広島弁で家族の関係を描く「柔らかく搖(ゆ)れる」で第66回岸田国士戯曲賞を受けた広島市安佐南区出身の劇作家・演出家福名理穂は10月、JMSアステールプラザ(中区)で受賞作を上演した。

 劇団四季は2024年11月~25年2月、ミュージカル「キャッツ」広島公演を12年ぶりに行うと発表した。

●映画

 11月の広島国際映画祭は4年ぶりに短編コンペティションを再開した。吉永小百合と渡哲也が主演して広島で撮った「愛と死の記録」(1966年)を上映した縁で、同作のシナリオなど故蔵原惟繕(これよし)監督が残した映画資料の広島市立中央図書館への寄贈が決まった。

 尾道を舞台に藤竜也が主演した「高野(たかの)豆腐店の春」(三原光尋監督)が8月、広島ロケをした菅田将暉主演「ミステリと言う勿(なか)れ」(松山博昭監督)が9月に公開され、ロングヒットとなった。(敬称略)

(2023年12月20日朝刊掲載)

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