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海自呉周辺「特別注視」に 土地規制 広島県内で初めて15ヵ所 恣意的運用に懸念も

 安全保障上重要な施設周辺などを対象とする土地利用規制法に基づく「特別注視区域」と「注視区域」に、広島県内の7市4町の15カ所が今月指定された。第3弾の指定で、県内では初めて。指定の効力が及ぶ来年1月15日以降、国が土地所有者や利用の状況を調査。機能を阻害する行為への中止勧告や罰則付きの命令が可能となる。一方で「恣意(しい)的な運用につながりかねない」と懸念する意見も出ている。(上木崇達、仁科裕成)

 「特別注視区域」と「注視区域」は重要施設の周囲約1キロや国境離島などが範囲となる。今回は自衛隊や米軍、原子力関係の施設などがある180カ所を選んだ。

 特に重要度が高い特別注視区域として、呉市の海上自衛隊呉基地内の呉地方総監部・係船堀地区などの周辺と、同市の野呂山の膳棚山受信所の周辺の計2カ所を指定。各施設を特定重要施設とし、周囲約1キロが区域内となる。国内に五つある海自総監部の中で先駆けて指定した。

 特別注視区域内では200平方メートル以上の土地・建物の所有権を移転する際、国への届け出が必要になる。呉地方総監部は市中心部に近く、JR呉駅や大型商業施設、商店街、住宅地などが含まれる。

 注視区域は彦山無線中継所(福山市)▽米軍の川上弾薬庫(東広島市)▽秋月弾薬庫(江田島市)▽陸自海田市駐屯地(海田町)―など計13カ所の周辺。広島市など一部の周辺自治体も範囲に含まれた。

 呉地方総監を務めた金沢工業大虎ノ門大学院の伊藤俊幸教授は「呉には重要艦船が多く停泊し、外国勢力が安保関連施設を監視する施設を整備することなどを防ぐことにつながる。一般的な市民が不利益を被るわけではない」とする。

 一方、同法の勉強会を開くなどする日本国民救援会(東京)の本藤修副会長=呉市=は「どのような行為が重要施設への阻害行為に当たるのかがあいまいで、恣意的に運用される可能性がある。しっかりした説明を求めていくことが必要」と注視する。

 過去2回の区域指定では国境離島などが対象となり、中国地方では島根県と鳥取県の島や陸自駐屯地など計28カ所が指定されている。

(2023年12月20日朝刊掲載)

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