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社説・コラム

天風録 『女性初の海将』

 何事にも、転機となったと言える時があるのではないか。米軍での女性進出は今年なのかもしれない。先月、歴史の長い海軍の制服組トップである作戦部長に初めて女性が就いた▲自衛隊はどうだろう。発足以来初めて、女性が最も階級の高い「将」に昇任した。海上自衛隊の基地がある岩国市出身の近藤奈津枝さん。山口大を卒業して臨時教員をしていた30年以上前に人生の転機を迎えた。採用試験に受かり「必要とされている」と感じ、海自に飛び込んだ▲かつては艦船に女性用の部屋がなく、遠洋への練習航海に参加できなかった。悔しい思いをしたが、女性隊員は徐々に増えつつある。海自の教育隊では長年、横須賀だけだった受け入れが、少しずつ他の施設に広がっている。呉も今春、門戸を開いた▲女性活躍に向けた課題解決に取り組む―。海将の着任式で近藤さんは強調した。男性優位の荒波をくぐり抜けてきただけに、改善点の多さを感じていよう▲後を絶たないセクハラも念頭にはあったはずだ。被害者の実名告発で、陸自内の強制わいせつ事件は有罪判決が出た。職場の風通しを良くするため、女性の進出や勇気ある訴えを転機にできるのではないか。

(2023年12月25日朝刊掲載)

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