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片渕監督が制作中の「つるばみ色のなぎ子たち」 長編アニメ「枕草子」の世界描く

「千年の魔法にかかったみたい」

 アニメーション作家の片渕須直監督が、清少納言「枕草子」の世界を描く長編映画「つるばみ色のなぎ子たち」の制作を進めている。公開時期は未定だが、11月末にあった広島国際映画祭では4分弱のパイロット版映像が上映された。徹底した時代考証で知られる片渕監督に今の思いを聞いた。(渡辺敬子)

 新作は平安時代の京都が舞台。つるばみ色は喪服の色という。片渕監督は巻き尺を手に京都を歩きながら平安京の建物の構造を検証したり、新嘗祭(にいなめさい)で奉納された舞の舞台を調べたり。アニメーションで平安時代を再現するための情報収集に余念がない。

 こうの史代の漫画が原作で戦時下の広島・呉を舞台とした「この世界の片隅に」では、一次史料の発掘や写真収集など入念な調査を行った。「80年前の世界を描いた同じ手法で、千年前へ旅をして描けないかと思っている」と狙いを明かす。

 「想像力は千年前を見ることができるし、目の前にいる人の心の中を思い測ることもできる」と片渕監督。枕草子は中宮定子に仕えた女房の視点で日々の営みや人間関係を記す。「みやびやかなだけではない世界。調べれば調べるほど共通点が増え、遠い時代の人たちとは思えなくなる」

 高樹のぶ子の小説が原作の「マイマイ新子と千年の魔法」は、防府市で暮らす現代の少女が、千年前にそこに住んだ少女時代の清少納言を思う物語。初長編映画「アリーテ姫」のせりふにも「千年の魔法」が登場するだけに、「千年の魔法に自分がかかってしまったみたいだ」と笑う。

 パイロット版では、蚊が媒介する疫病で男性が路上に倒れ込む場面も描かれる。「平安時代の人々は、われわれとは違う認識を持っている。病原体なんて言葉は知らない。鬼やたたり、うごめくものを感じながら、信じながら生きている。そこまで踏み込まなければ、当時の人々を描いたことにならない」と力を込めた。

(2023年12月23日朝刊掲載)

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