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社説・コラム

『ひと・とき』 ドキュメンタリー映画監督 ピーター・ブロウさん

先住民の目で「核」を知る

 カナダでのウラン採掘が先住民にもたらした核被害を追った「寡婦たちの村」を、広島市であった原爆文学研究会の関連プログラムで上映した。長く活動拠点とするカナダで1999年に公開した作品だが、日本では初上映という。

 カナダのウラン鉱山は早くから採掘が進み、第2次世界大戦中の米国の原爆開発にも寄与したとされる。映画は、鉱山に近い先住民の村で、鉱石の運搬などに携わった夫をがんで失った妻たちを取材。長く放置された核汚染や、声を上げ始めた人々の姿を描く。

 「ヒロシマの写真を見せた時の、彼女たちの驚きぶりに驚いた」。映画には、先住民の女性が「日本の人に申し訳ない。知らなかった」とつぶやくシーンもある。当時はタブー視されたテーマで製作の労苦は大きかったが、反響も大きかったという。

 「私たちがいかに自らを破滅に導くような文明をつくってきたか、自然への畏敬を持つ先住民の目を通して見えてきた」と振り返り、原発についても「危険なものをもてあそんでいると言うほかない」と述べた。(道面雅量)

(2024年1月9日朝刊掲載)

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