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被服支廠 1号棟譲渡へ 広島県調整 無償で市に 耐震費 想定の1.7倍か

 広島市南区にある最大級の被爆建物「旧陸軍被服支廠(ししょう)」を巡り、広島県が所有する1~3号棟のうち、平和学習拠点として活用を想定する1号棟を市へ無償譲渡する方向で調整していることが11日、分かった。耐震化費用は3棟で計29億円台となり、想定の1・7倍に膨らむ見通しだ。(河野揚、野平慧一)

 県は国所有の4号棟を含む将来的な活用イメージで、1号棟を平和学習拠点、2~4号棟を地域住民の交流や宿泊・観光拠点としている。複数の関係者によると、市は「ヒロシマの心」を発信する施設として利活用するため、1号棟を耐震化終了後の2027年度に県から無償で譲り受ける方針という。

 県は20年12月時点で3棟の耐震化費用を計17億4千万円と見込んだが、建築資材の高騰で計29億円台になる見通し。全4棟が2月にも国重要文化財に指定されるため、県は耐震化費用の半額を文化庁の補助金で賄う想定でいる。残る半額は県と市が「1対1」の割合で負担する方向で調整している。

 県は24年度一般会計当初予算案に耐震化費用の一部を盛り込む方針だ。ただ、県議会内には複数棟を市へ譲渡すべきだとの意見もあり、県は慎重に最終調整を進めている。市も県の動向を踏まえながら、24年度当初予算案に耐震化費用の一部を県への負担金として計上する方向で検討している。

(2024年1月12日朝刊掲載)

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