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大久野島沖毒ガス兵器? 来月 引き揚げ着手 環境相方針

■記者 毒ガス問題取材班

 竹原市大久野島沖で毒ガス兵器とみられる不審物が放置されている問題で、斉藤鉄夫環境相は17日、中国新聞のインタビューに応じ、環境省の送水管敷設工事に伴う調査で見つかった約20個の不審物について「引き揚げ作業に8月中にも着手したい」と述べた。

 中国新聞の潜水取材で新たに周辺で見つかった約15個の不審物に関しては「約20個の分析結果を踏まえて決めたい」とした。環境省によると、内容物の分析には約1カ月かかる。周辺海域の本格的な調査は「現時点で必要ない」との認識も示した。

 不審物は1月19日、環境省から送水管敷設ルートの海底調査を請け負った業者が発見した。毒ガス弾などが水域で見つかった場合、内閣官房が対応を総合調整するとの閣議決定に基づき、6月5日、環境省を中心に対応することを決定。同22日、引き揚げと分析の方針を固めた。発見から約5カ月後だった。

 対応が遅れたのではとの指摘に対し、斉藤環境相は「安全上の問題はないと高い確率で類推できたので、ルールに従って対処した」と説明。「地域住民の不安に迅速に応えるという点では反省もある」と述べた。

大久野島の毒ガス工場
 1929年、旧陸軍造兵廠(しょう)火工廠忠海兵器製造所として開所した。(1)イペリットなどびらん性の「きい」(2)催涙性の「みどり」(3)ヒ素を原料にしているくしゃみ性の「あか」―などを製造した。米太平洋陸軍の資料によると、総生産量は原液状態で6616トンに上る。島周辺の海には終戦直後、進駐軍が来るまでに証拠隠滅のため、毒ガスの資材や製造機械などが捨てられた、との証言も残る。

(2009年7月18日朝刊掲載)

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