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平和願い 広響・神楽コラボ 被爆80年の25年 4回目の上演へ 秋山さん指揮で「オロチ」

 被爆80年を迎える2025年の6月1日、広島交響楽団の終身名誉指揮者秋山和慶さんのタクトで、広響と山王神楽団(広島県北広島町)が協演する創作神楽「オロチ」がJMSアステールプラザ(広島市中区)で披露される。「平和の舞2025―鎮魂と再生」と銘打ち、広島から世界へ文化による平和の発信を目指す。(渡辺敬子)

 実行委員会がこのほど市役所で記者会見した。委員長を務める椋田昌夫広島電鉄社長は「世界の平和文化都市から、熱いメッセージを発信する。賛同をお願いしたい」と協力を呼びかけた。

 神楽の人気演目「八岐大蛇(やまたのおろち)」をアレンジ。荒れ狂う大蛇の首を切り落とす場面はなく、魂を鎮められた大蛇は生きたまま自然へ戻る。初演は09年「ひろしま夏の芸術祭」で、10年、18年と改訂を重ね、4回目の上演だ。

 「様式の違うものがぶつかり合い、溶け込んで一つの音楽を作り上げる」と作曲したエリザベト音楽大名誉教授の伴谷晃二さん。中国山地の自然を表す8頭の大蛇の舞、オーケストラ、神楽の太鼓や笛が、幻想的な舞台演出で絡み合う。

 09年から参加する山王神楽団の田坂真吾団長は「神楽は譜面もなく、あうんの呼吸。オーケストラと合わせるのはとても難しく、毎回猛練習を重ねて不安を解消してきた。若い団員に継承し、世界へ羽ばたく舞台に育てたい」と意気込む。

 秋山さんも「被爆80年。気持ちを込めて頑張りたい。力いっぱい努力して立派な成果を上げたい」と抱負を語った。

 料金など詳細は追って発表する。事務局☎0829(38)2264。

迫力…面白くて興奮する 秋山さん

 4回目の指揮となる83歳の秋山さんに「オロチ」の魅力を聞いた。

  ―オーケストラと神楽の協演は当時、国内でも初の試みでした。
 最初に話を頂いた時は「どう組み合わせるのだろう」と頭にクエスチョンマークが浮かんだ。同時に、何か面白いものができる予感もした。スコアを見て「なるほどな」と。混然と混ぜるのではなく、聴く人にも見る人にも分かりやすく対話させていた。それぞれの響きや流れ、奏者の個性が感じられる。初めて見る方もどうぞご心配なく。

  ―指揮台からはどんな景色が見えますか。
 薄暗く神秘的な雰囲気で始まり、進むにつれて8頭のオロチが暴れまくる。酒を飲んでけんかして、ピットに落ちるんじゃないかと思うほどの迫力に圧倒される。オーケストラもフルのサウンドで対応した。とても面白くて興奮する。前回の公演では神楽の女性の笛が見事で、美しい音色に僕はちょっと涙が出た。

  ―ことしは指揮活動60周年の節目です。
 あっという間の60年。いろいろな国でさまざまなプログラムを有名なソリストたちとやらせてもらった。貴重な経験で幸せなこと。ことし6月の広響の定期演奏会で取り組む交響曲は、日本初演の北欧作品。朝比奈隆先生は93歳まで振っていらした。10年先のことは分からないけれど、そこまでいけたらいいね。

(2024年1月20日朝刊掲載)

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