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連載・特集

『生きて』 広島東洋カープ元選手・監督 山本浩二さん(1946年~) <8> 読みのコージ

投手を観察 癖を見抜く

  ≪きっかけは法政大先輩の長池徳二(阪急)との食事会だった≫

 入団2、3年目に長池さんに「投手を見ろ。癖がある」と言われたのよ。マウンドで振りかぶった時の手の動き、グラブの開きに集中しろと。あれ以来、最初の頃はメモして、次は配球を1球目、2球目は何と、引退まで毎試合チャートに書き続けた。トータルしたら癖だけの話じゃなくなったよな。

 ≪投手の投球動作や表情を徹底的に観察。知らなかった世界が次々と見えてきた≫

 投手が捕手のサインを見るところから注視すると、球種ごとの違いが分かった。利き手のグラブへの入り方は横からか縦からか。セットポジションではグラブの位置で球種が違う。癖はサイン交換の後、うなずき方にも出る。得意な球種の時は大きくうなずくけど、他の球種の時は首の動きが小さいとかね。

 フォークボールは打ちにくい球だけど、癖が一番出やすいのよ。だから(中日の)牛島和彦とは相性が良かったね。ただ、相手も研究するわな。セットで投げたり、振りかぶるときに握り直したり。工夫してたよ。

 試合中に打席が回ってこない時はベンチ裏でたばこを吸いながら見るし、少しでも違うしぐさなら今の球種は何と聞く。投手の7割ぐらいは何も分からんのやけど、一つでも癖が分かればプラスになるやろ。それが配球の読みにつながっていった。

 ≪次打者席で右膝を突く独特のスタイルは定点観察だった≫

 膝を突いて捕手目線にして投手の直球の伸び具合や球審の癖も確認していた。高めはどこまでストライクかとかな。投手の攻め方やカウントごとの配球、捕手の性格も含め、打席ごとに読んで狙い球を決めていく。長池さんとの食事会以来、ずっと継続したのが、わしにとってはものすごい財産なのよ。

 ≪6年目の1974年は打率2割7分5厘、28本塁打、74打点でキャリアハイ。「ミスター赤ヘル」誕生の前夜となる≫

(2024年1月27日朝刊掲載)

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