×

連載・特集

ぐるっとわがまち 江波 <3> 「7日の慰霊」惨劇後世に

母子愛の像に住民誓う

 江波(広島市中区)では8月7日に原爆犠牲者の慰霊式をするんよ-。地元住民からそう聞き、興味を持った。原爆が落とされた当日の6日ではなく、あえて翌7日なのだという。

 江波地区社会福祉協議会の恵南祈八郎会長(79)と江波連合町内会の守本肇会長(83)が、慰霊式の会場になっている石碑周辺を案内してくれた。

 江波山公園内の慰霊碑「母子愛の像」(高さ3.5メートル、幅1.5メートル)。母が幼子を抱きしめる姿が刻まれている。被爆50年の1995年、同社協が住民からの浄財で建立した。

 碑文は、被爆後の江波の様子を伝える。45年8月6日、原爆の炎熱に追われた人たちが川に入って息絶え、翌7日に無数の遺体が「江波町の波打ち際に漂着して来た」、逃げ惑う大勢の被爆者が江波に「無残な姿で殺到」したとある。

 江波で生まれ育ち、被爆者でもある恵南会長が「住民が地元の火葬場で亡きがらを焼き続け、秋までかかったと聞いとります」と語った。原爆資料館(中区)所蔵の「原爆の絵」を探すと、7日に江波へ流れ着いた遺体の絵や、7日から秋まで江波で火葬が続いたと説明した作品があった。

 碑が建てられて29年。銘板は変色し、碑文は読むのもカメラで撮るのも難しい。目を凝らし570字ほどをノートに書き写した。惨劇を後世に伝えようと碑を造り、「7日の慰霊」を大切にする住民の思いをかみ締めた。(久保友美恵)

(2024年1月29日朝刊掲載)

年別アーカイブ