×

社説・コラム

天風録 『大空翼と平和』

 43年前の高校時代、雑誌連載が始まった漫画に魅せられた。「キャプテン翼」。サッカーを愛する少年、大空翼が静岡の架空の街で成長する。丘の上から蹴ったボールが大空を舞い、後に盟友となるGK若林の胸に。最初の名場面の躍動感は色あせない▲「ボールはともだち、こわくないよ」。翼の言葉に励まされ、サッカーを始めた少年少女が競技の裾野を広げたのは間違いない。全国へ、世界の舞台へ。翼の物語の後を追うように今や日本選手たちが海外で活躍する▲スポーツ界を動かした漫画が、開業した「エディオンピースウイング広島」の壁面に登場した。作者高橋陽一さんの描き下ろし。成長した翼が「サッカー世界平和宣言」を広く発信する▲翼の力強いせりふには共感した。「ボクはこの世界から戦争をなくしたい!」「戦うなら正々堂々サッカーで戦おう!」。被爆地のサッカーの聖地が文字通り、平和の翼となればと願う▲世界50カ国以上で愛される「キャプテン翼」。翼は今では欧州のプロ選手だ。漫画の連載は4月で終わるが、高橋さんは物語の構想を続けるそうだ。世界中が友達に―。祈りを胸に、このスタジアムで躍動する場面も見てみたい。

(2024年2月4日朝刊掲載)

年別アーカイブ