『生きて』 広島東洋カープ元選手・監督 山本浩二さん(1946年~) <12> 全盛期
24年2月7日
ght:bold;">「江川対策」で秘密練習
法政の後輩だし、入団の経緯も生意気やし、打ちのめしたろと思ったよ。でも初めて対戦したら球は速いし、カーブの切れもすごい。あの年は打率1割ぐらいしか打てなかった。その年のオフに番組で対談したら頭のいいやつだし、いずれはエースだろうから、こいつを打たないといかんとね。そこからやね。
当時は誰にも言わなかったけど、あいつの武器の内角高めの直球を打つ練習をした。バットを短めに持って打撃マシンに3メートル近づき、コンパクトに打つ。ボールなら打たない。癖は分かっていないから三つのストライクのうち、内角高めを待つ一振り勝負。打ち損じたら凡打よ。
対戦した投手で、右の一番は江川だね。高めの球はホップしてきたよ。左は江夏豊(阪神)。低めの球が伸びて、ボールだと見逃したら判定はストライクなのよ。豊からは6本塁打か。少ないよな。苦手だったのは小林繁(巨人-阪神)。打てんかった。
積み重ねと継続。ここに来れば、こういうふうに打つ、右中間や左中間に打球が伸びるという打ち方が身に付いた。ベテランになってからは対応できる投手も増えた。投手の癖や配球を読んで、内角球をさばけるようになり、初球からの一振り勝負はスイングスピードも増して仕留められる確率も高くなった。要はいかに甘い球を確実に打つか。打てて(打率)3割。難しい球は打ててないから。
タイトルを取った次の年はマークがきつくなるから、それ以上のことをやる。その繰り返しで江川対策が典型例だよ。
(2024年2月7日朝刊掲載)