[地域きらり] 都心の離島にレジャー機運 似島(広島市南区)
24年2月7日
観光案内所・宿泊体験施設など改装
人口減打破に期待
広島市の市街地に近い似島(南区)で、レジャー客向けの施設が充実しつつある。観光案内所の改装やグランピング施設の開業が相次ぎ、移住者や企業が豊かな自然を発信している。4月には、老朽化した市の宿泊体験施設がコテージなどを備え一新する。人口減と高齢化が進む島が活気づきそうだ。(口元惇矢)
南区宇品海岸の広島港からフェリーで約20分。似島桟橋の近くに、自転車と船が描かれた黒い建物が見える。観光案内所のウエルカム似島だ。自転車や釣り具を貸し出し、似島が国内発祥の地とされるバウムクーヘンを販売している。昨年3月に装いを新たにした。
運営する小松健二さん(46)は西区出身。東京で働いた後、島の自然に魅せられ、2018年に地域おこし協力隊員として移住した。案内所から南西約1キロの浜辺で、シーカヤックやバーベキューを楽しめる施設も運営している。「島の知名度を上げて、訪れる人を増やしたい。移住につなげられれば」と願う。
利用者層を拡大
宿泊施設のグランピングリゾート似島も人気を集める。海を眺められるサウナやドラム缶風呂が売りで、22年に営業を始めた。イベント向け冷蔵機器レンタルなどのビート(安芸区)が運営する。「広島の市街地からのアクセスがよく、広島県外の宿泊客も多い」と常務の渉智明さん(43)。周辺施設との連携も思い描く。
市も島の活性化に力を入れる。宿泊体験施設の市似島歓迎交流センターを4月に全面リニューアルオープンし、コテージや飲酒ができる食堂を設ける。小中学生が中心だった利用者を家族連れや企業の研修者に広げる。
センターの刷新には島の歴史もにじむ。命名権を取得したのは洋菓子製造のユーハイム(神戸市)。創業者のドイツ人菓子職人カール・ユーハイムは、第1次世界大戦時に捕虜として似島に収容され、日本で初めてバウムクーヘンを焼いた。
砂利の採取運搬や漁業で栄えた似島の人口は、昨年末時点で679人と四半世紀で半減し、65歳以上は53・6%を占める。似島地区コミュニティ交流協議会長の堀口照幸さん(75)は「島に魅力を感じ、島外から協力があるのはありがたい。今後は周知が大事になる。島民としても頑張っていきたい」と力を込める。
島外で誘客PR
センターの改装オープンを控え、情報発信も熱を帯びる。指定管理者のイズミテクノ(広島市西区)とJR西日本コミュニケーションズ(大阪市)の共同企業体(JV)は今月上旬、商業施設のゆめタウン広島(南区)で島のPRイベントを開いた。
グランピングのテントやカヤックが並んだほか、バウムクーヘンの配布もあり、2日間で約千人が来場した。家族6人で訪れた安佐南区の会社員井上紘寿さん(33)は「コンパクトな島で、家族で気軽に楽しめそう」。自然と歴史が詰まった周囲16キロの島が、都市部から人を引き寄せる。
(2024年2月7日朝刊掲載)