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原爆の体験記を再発刊 解散した御調の被害者協 元役員、学校や図書館寄贈

 2020年に解散した御調町原爆被害者協議会(尾道市御調町)が被爆40年と60年の節目に作った体験記集を、元役員が一冊にまとめて発刊した。平和への思いを次世代に継ぐため、町内の小中高校や保育所に配るほか、市立みつぎ子ども図書館に生徒たちが一斉に借りられるよう20冊余りを寄贈する。

 同協議会は70年に200人余りで設立し、追悼式典や語り部活動を続けてきたが、会員の減少などを理由に解散した。1985年と2005年に発刊した体験記集がわずかしか残っていないため、田中長子さん(77)が再発刊を思い立ち、金野鈴恵さん(80)と尽力。100部を作り、費用は同協議会に残った会費で賄った。

 B5判、160ページ。延べ80人分の寄稿文を載せた。「兄を探しに」「被爆者救護活動に参加して」と題する手記など入市被爆の事例が目立つ。2歳で被爆した金野さんは家族と川を渡って逃げた様子を振り返り「お互いに命を大事に生きて、明るい社会をつくりたい」と記している。

 同協議会の解散後も、慰霊碑には町内の学校や保育所から折り鶴が届く。元教職員の有志は体験記を基にした紙芝居の朗読活動を続ける。金野さんは「体験記集を調べ学習で活用し、戦争はいけないという素直な気持ちを持ったまま大人になってほしい」と願う。  (森田晃司)

(2024年2月8日朝刊掲載)

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